バックナンバー

2020/12/31 米国のバイデン次期政権は来年1月20日の発足直後に、トランプ現政権が導入した政策でまだ発効していないものを無効化する。移行チームのサキ報道官が30日、明らかにした。サキ氏は「バイデン次期政権は、まだ発行していない政策を米東部時間の1月20日午後に停止、もしくは遅延させるメモを発表する」と述べた。サキ氏は、企業が最低賃金などの規則適用を免れるために従業員を独立契約労働者と認定しやすくする労働省の規則を例に挙げ、「この規則が発効すれば、労働者の収入37億ドル超が毎年失われる」と指摘。「バイデン新政権が発足直後に発表するメモで、こうした規則が凍結される」と述べた。このほか、来週に閣僚級人事をさらに発表すると表明。ただ年内の発表はないとした。主要ポストでは司法長官と労働長官がまだ指名されていない。
2020/12/31 続いてボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相も署名した。欧州連合(EU)と英の貿易協定の署名に臨む、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長(左)と欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長(2020年12月30日撮影)。© JOHANNA GERON / POOL / AFP 欧州連合(EU)と英の貿易協定の署名に臨む、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長(左)と欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長(2020年12月30日撮影)。  英国がEUの単一市場を離れる前日となった同日、小規模な式典でEUトップが署名した文書は、英空軍の戦闘機でロンドンに送られた。この文書を受け取ったジョンソン氏は署名の後、親指を立て、「英国と、EUの友人やパートナーとの素晴らしい関係の始まり」と述べた。 もっと見る
2020/12/31  菅義偉首相は30日午前、東京・赤坂の書店を訪れた。「新刊話題の本」のコーナーなどを10分ほどかけて見て回り、新書や雑誌を数冊購入した。そのうちの1冊は、今年9月に発売された「感染症の日本史」(磯田道史著)。平安時代の歴史書や江戸時代の随筆、約100年前のスペイン風邪流行時の政治家や文豪の日記などを歴史家の著者がひもとき、日本人が感染症にどう対応してきたか記している。今年1月中旬に国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されて以降、安倍前政権の官房長官時代から対策にあたる首相だが、この日購入した書籍を公務が少ない年末年始に読むものとみられる。首相は30日夕、大雪警戒を閣僚らに指示した後、記者団に「よいお年を」と自ら声をかけて、首相官邸を後にした。
2020/12/30 欧州連合(EU)と中国の首脳は30日、投資協定を巡り合意を発表する見通しだ。ブリュッセルの当局者によると、EU行政執行機関の欧州委員会のフォンデアライエン委員長とミシェルEU大統領(常任議長)が30日、中国の習近平国家主席とビデオ会議方式で会談し、2013年に始まった投資協定交渉の妥結を打ち出す計画。 EU議長国ドイツのメルケル首相も会談に加わる見通しだと当局者のうち2人が述べた。ミシェル大統領は29日、習氏とのビデオ会議が中央欧州時間午後1時(日本時間同9時)から始まる予定だとツイートした。
2020/12/30 新型コロナ感染後に死亡する人の割合は、東京が1.1%にとどまるのに対し、岩手、富山、石川の3県では5%を超えるなど地域によって大きな差があることが29日、共同通信の集計で分かった。高齢者施設などでのクラスター(感染者集団)発生のほか、医療設備や治療経験の差が影響したとみられる。感染防止策や医療提供体制を全国で共有する取り組みが求められそうだ。共同通信が、23日時点の都道府県別の感染者数に対する死者の割合を調べた結果、最も高かったのは岩手の5.8%で、福島、福井、兵庫など16道府県が全国の平均の1.5%を超えた。これに対し、島根や鳥取は死者が出ていない。
2020/12/30 次期米大統領への選出が確実となった民主党のバイデン前副大統領は28日、東部デラウェア州で次期政権の外交・安全保障チームとオンライン形式で会合した後、外交政策方針に関する演説を行った。バイデン氏は「競争相手」である中国に「不公正貿易や技術、人権侵害などの問題で責任を負わせる」と述べた上で、「同盟・友好諸国と共通の利益と価値観を守る必要がある」と指摘し、同盟諸国と連携して中国に対抗していくと訴えた。バイデン氏は、同盟諸国との結束を強化すれば「米国の立場は一層強固になる」と強調。米中間の懸案として、インド太平洋地域の安全と繁栄の確保、米国の労働者や知的財産の保護などを挙げた。
2020/12/29 菅義偉首相の情報発信に取り組む姿勢に変化が生じている。首相官邸などで記者団が囲むぶら下がり取材では、原稿を読まず記者の目を見て話すことが増え、「さら問い」と呼ばれる追加の質問にも答えるようになった。発信不足との批判を受け、修正を図っているようだ。「静かな年末年始をお過ごしいただきたい」首相は28日、首相官邸でまっすぐ記者団を見据えながらこう訴えた。手元に原稿はあったが極力視線を上げ、訴えかける姿勢を示そうとした跡がうかがえる。25日の記者会見でも、身ぶり手ぶりを交えて感染防止対策の徹底を呼びかけた。演壇の縁をつかみ、不動の姿勢で話す官房長官時代からのスタイルとは違う。
2020/12/28 2020年、コロナ禍が政治的なものをあぶり出した 020年、あらゆるニュースの中で最大のトピックといえば、もちろんコロナウイルスだ。王冠という名のこのウイルスは、あらゆる人々に行動変容を迫り、文字通り世界を全く違ったものにした。同時に事実上の非常事態が続く中で、社会経済に深刻なダメージを与えたこのウイルスは、この社会に渦巻いている様々な政治的なものを副次的にあぶり出した。2020年5月、黒川弘務検事長の検事総長への就任を念頭に置いた検察庁法改正案への反対が、SNSを中心に拡大した。黒川検事長は当時の安倍政権に近く、黒川「検事総長」を通して検察を統制下に置くことで、安倍政権の様々な疑惑を追及させない意図があるのだとみられていた。 黒川検事長は、コロナウイルス流行拡大に伴う緊急事態宣言下において複数回の賭けマージャンを行ったという事実が暴露されたこともあり、自ら辞任。同法の改正案も立ち消えとなった。
2020/12/28 コロナ禍に苦闘し続けた2020年が終わり、「すべてはコロナ次第」(首相経験者)となりそうな2021年の政局。その最大の焦点は衆院解散・総選挙の時期となりそうだ。 菅義偉首相の選択肢は極めて限られるが、コロナ対応に迷走し、年末にかけての内閣支持率は急落。「菅首相が予算成立後に解散、4月25日投開票を模索し始めている」(自民幹部)との臆測も広がっている。政府は、次期通常国会を2021年1月18日に召集し、冒頭で第3次補正予算を成立させたうえで、新年度予算の年度内成立を目指す方針だ。このため、一時取り沙汰されていた年明け解散説は消滅し、菅首相による解散・総選挙の選択肢は「予算成立後」「通常国会会期末」「東京五輪後」の3つに絞られた格好だ。菅首相はもともと、9月の政権発足時から「実績を積み重ねたうえで国民の信を問う」と考え、首相就任前に「9月の臨時国会冒頭解散ー10月25日衆院選投開票」の選択肢を消した。そのうえで、公約に掲げた携帯電話値下げとデジタル庁の創設、不妊治療の保険適用という「3大スガ案件」の実現に邁進。それと並行してコロナ感染拡大阻止に「政治資源のほとんどを投入」(官邸筋)してきた。
2020/12/28  政府は28日、全ての国・地域からの外国人に関し、条件付きで認めてきた新規入国を来年1月末まで一時停止した。新型コロナウイルスの変異種の国内侵入を防ぐ狙い。経済への影響を最小限にとどめるため、中国や韓国など11の国・地域との間で合意している2国間のビジネス関係者らの往来は、引き続き認める。24日から英国、南アフリカに滞在歴がある外国人の新規入国を既に拒否していたが、対象を拡大した。海外への短期出張から帰国した日本人らに、条件付きで認めた帰国後14日間の待機免除措置も同様に一時停止した。
2020/12/28 自民党の二階俊博幹事長は27日放送のBS朝日の番組で、14日夜に東京・銀座のステーキ店で菅義偉首相らと8人程度の会食をしたことについて、「別に8人で会っただけで、会食という、そんなことを特にやったわけではない。飯を食うために集まったのではない」として「会食」を否定した。二階氏は14日の会合の趣旨について、「いろんな面で出会った人たちで年に1回の忘年会を開いていた。ちょうど良い機会だから首相も各界の代表的な人たちに出会っておいたらいいかなという感じでね」と説明。「頭から3人とか4人とかで切ることではない」として少人数での開催は検討しなかったことを明らかにした。 のうえで、司会者から「飲食店で食事をともにしたら会食ではないのか」と聞かれたが、「ただそこでその時間に出会った。そこで出会って意見交換をする。今の事態に対してもどう対応するかということなども考えている」と反論した。 14日の会食には首相や二階氏の他、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長、俳優の杉良太郎氏、タレントのみのもんた氏らが同席。首相は16日に「国民の誤解を招くという意味においては真摯(しんし)に反省している」と謝罪している。【
2020/12/27 米議会共和党は今週、上下両院を通過したもののトランプ大統領が批判を繰り広げている2つの重要法案を巡り、重大な局面を迎える。その一つはトランプ氏が23日に拒否権を行使した7405億ドル(約76兆6000億円)規模の国防権限法案だ。上下両院でそれぞれ3分の2以上の多数で可決されていた同法案について、フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディア企業の免責を撤廃する文言を盛り込むよう求めていた大統領は26日、「大手テクノロジー企業を抑制しないまま、この法案の茶番が成立するのを傍観するわけにはいかない」とツイート。これら企業がユーザーが投稿したコンテンツに法的責任を負わなくて済む通信品位法「230条を今すぐ終わらせろ」と続けた。民主党のペロシ下院議長はトランプ氏の拒否権を覆すための採決を今週行う意向を表明済みで、下院の動きを見てからマコネル共和党上院院内総務は上院の指針を示す予定だ。
2020/12/27 「桜を見る会」の前日に開いた夕食会を巡る問題で、安倍晋三前首相は25日、国会に出席し、100回以上に及んだ事実に反する首相時代の答弁について謝罪した。しかし、野党が求める資料の提出に難色を示すなど、謎は深まるばかり。早期の幕引きを目指した「政治とカネ」問題が、菅義偉首相の政権運営にも重くのしかかっている。 「年内に片付けたかったんだろう」。自民党中堅が指摘するように、菅政権としては、安倍氏が国会の場で説明に立つことで「桜」問題の幕引きを図りたい考えだ。安倍氏は議運委後、記者団に「説明責任を果たすことができたのではないか」と胸を張り、政権中枢からは「誠実に対応した」「これで一区切り」といった声が相次いだ。
2020/12/27 AFPが各国当局の発表に基づき日本時間26日午後8時にまとめた統計によると、世界の新型コロナウイルスによる死者数は175万780人に増加した。中国で昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生して以降、これまでに世界で少なくとも7975万8000人の感染が確認され、少なくとも5040万5700人が回復した。この統計は、各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関(WHO)からの情報に基づいたもので、実際の感染者はこれよりも多いとみられる。多くの国では、症状がある人や重症患者にのみ検査を実施している。25日には世界全体で新たに8389人の死亡と48万5359人の新規感染が発表された。 死者の増加幅が最も大きいのは米国の1414人。次いでメキシコ(665人)、英国(570人)となっている。
2020/12/26 東京都は26日、新型コロナウイルスの感染者を新たに949人確認したと発表した。1日あたりの感染者数としては、24日の888人を上回り、過去最多になった。都内ではこれで12日連続で曜日ごとの最多を更新した。一方、「人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO(エクモ))を使用」とする都基準の重症者数は前日と同じ81人だった。感染者949人を年代別で見ると、20代が277人で最多。30代が202人、50代が134人、40代が133人と続いた。65歳以上の高齢者は113人だった。
2020/12/25 英国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)交渉が合意したのは、最大の課題だった「英周辺海域での漁業権」をめぐって英国が譲歩したためだ。漁業権は英国がEU離脱で回復を目指す「主権」に関わる問題であり、ジョンソン英政権にとって妥協したくない分野だった。しかし、新型コロナウイルス変異種の感染拡大で物流に多大な影響が生じる中、交渉の破談によるさらなる混乱を防ぐために英国はEUとの合意を急いだとみられる。 EUの共通漁業政策の下では、EU加盟国は割り当てられた漁獲上限を守れば、他国の排他的経済水域(EEZ)でも漁ができる。EU離脱を主導したジョンソン政権は漁業権をEUからの「主権回復」の象徴と位置付け、自国による英周辺海域の管理を強化することを狙っていた。
2020/12/24 欧州連合(EU)と英国はEU離脱後の自由貿易協定(FTA)締結交渉で歴史的な合意に近づいている。23日中にも決着するとの期待が当局者の間で高まっている。EUのバルニエ首席交渉官は22日、加盟国27カ国が開いた大使級会合で、協議で進展があったと報告し、英国が漁業権でさらに歩み寄る用意があれば、クリスマス前の合意は可能との認識を示した。複数の外交当局者が明らかにした。事情に詳しい関係者によると、英国側は21日、EUが他の分野で折れるのを条件に一定の譲歩を申し出た。英国は最新の提案で、EUによる英水域での年間漁獲高(金額ベース)を約3分の1減らすよう要求。先週の段階では、60%削減の受け入れを主張していた。事情に詳しい複数の当局者によれば、EU側は25%を上回る削減が、フランスやデンマークにとって受け入れ難いとして、英国の提案を拒否したという。  新たな取り決めの段階的導入期間も、EUが当初の要求の10年から7年に譲歩し、英側はこれまでの3年から5年に歩み寄ったが、なお主張に開きがある。移行期間終了後に英水域への漁業アクセスを同国政府が制限した場合、EUが報復関税を課す権利を巡っては、英側は最新の提案で、漁業分野に限定し、EUが要求するエネルギーなど他の分野では受け入れない立場を示した。英国とEUは通商交渉で歴史的な合意まで間近に迫っている。23日にも成立するとの期待が当局者の間で高まっている。複数の当局者によると、交渉はまさに最後の局面にある。合意への最大の障害だった漁業権について、協議はまだ続いている。交渉が決裂する可能性もまだあると、英国はEUとの通商合意についてなお、「そこそこ楽観している」とジェンリック住宅・地域社会・自治相が23日述べた。 同相はスカイニューズに対し、ジョンソン英首相は最後の瞬間まで交渉を続ける意向を非常に明確にしている。それは12月31日だ」と語った。 
2020/12/23  終戦から七十五年、古川柳の「売り家と唐様で書く三代目」が思い出される。苦労知らずの三代目が破産して、金を払って習った書体で売り家と書いていると詠んだものだ。一代が二十五〜三十年なら今年は三代目の後半に当たる。  いわば時代の変わり目に出された本書は、雑誌『世界』での「我が総括」と題した連載をまとめたもので、国民学校五年生の時に終戦を迎えた著者の自伝的戦後史である。六〇年安保闘争に参加した時は条約内容を知らなかったと記しているように、リアルな体験と直接的な見聞、さらに同時代人の「証言」に基づいて戦後政治を描いている。広く知られているように著者は、テレビ番組で出演者に切り込み、「ホンネ」を語らせてきた。実はインタビューや綿密な調査で裏付けた著作も多数ある。中でも、『日本の政治』ではロッキード事件における田中角栄の無罪を、『正義の罠(わな)』でリクルート事件が検察による捏造(ねつぞう)だと論じたことは、その判断の当否は別として興味深い。本書でも一部が繰り返されているが、それ以上に田中、竹下登、中曽根康弘、小沢一郎ら多くの政治家に対する直接インタビューは、その時々の政局を理解する上で示唆に富む。また、政権交代に関する各々(おのおの)のエピソードも興味深い。著者が政治の狂言回しの役割を何度も果たしている。 宮沢喜一内閣が「嘘(うそ)つき解散」に至った発端は、著者の番組での宮沢発言だった。別の番組で、参院選の一週間前に橋本龍太郎首相が中継で出演したが、その際の発言をマスコミが「迷走」と追い詰めたことで自民党が惨敗した。さらに、小泉純一郎が総裁選出馬時に、著者に協力依頼したことなどである。加えて、北朝鮮拉致問題に関する新事実入手の経緯、西松事件は小沢つぶしが目的だとの指摘などもある。  一連の事実描写や評価を読むことで、日米関係を中心に構築されてきた戦後体制が変革期の真っただ中にあり、三代目の世代がいま一歩踏み出す責務を持つと感じさせるものとなっている。
2020/12/23 特集の冒頭には、菅総理を若手時代からよく知る古賀誠氏、亀井静香氏へのインタビュー(聞き手は藤井編集長)を掲載しています。お二人とも、菅総理が竹中平蔵氏に象徴されるような新自由主義路線を進みつつあることに懸念を示しておられるのですが、印象深かったのは政策論よりも人物評ですね。古賀氏によれば、菅総理の生きがいは仕事だけで、よもやま話をするのは苦手であり、息が詰まるぐらい管理が細かく、朝の散歩の時すら常に背広姿であり、「ほとんど背広を着て寝ているようなもの」だそうです。また亀井氏は、「酒もタバコもやらないってのもちょっとね、女も聞かねぇな。そしたら何のために生きてるのかな」「あいつと酒飲もうとは思わんな」と評しています。この「くそ真面目」ともいうべき人物像は、「秋田の農村から東京・横浜へ出て苦労を重ねた叩き上げの仕事人」という、一時期ワイドショーでよく語られたストーリーにも合致するので、世間では好印象の材料となるのかも知れません。実際、安倍内閣の官房長官時代、特に「令和おじさん」のあだ名が付いた直後の時期には、人物として好感を持つ人が多かったですよね。「良い意味で地味」といったところでしょうか。学術会議問題やGoTo騒動で不評を買っているので、最近はそう印象が良いわけでもないのでしょうが、1年ほど前には私も、近所の喫茶店で女子高生がスマホの画像を見ながら「菅さんめっちゃ可愛いわ〜」などと語り合っているのを目の当たりにしました。そんなのはテレビ番組のヤラセか、ネット上でのみ語られる都市伝説のようなものだと思っていたので、驚きましたね。しかし今回の特集を通して読むと、菅総理の「真面目さ」について、全く違った解釈をしたくなってきます。簡単に言うと、その真面目さは「苦労の多い人生経験に裏付けられた素朴で堅実な人柄」の表れなどではなく、ある種の人々に対する「恨み」や「嫌悪感」を根に持った「執念深さ」なのではないかということです。それを政治評論家の泉宏氏は「エリートへの反発」と呼び、文芸批評家の浜崎洋介氏は「『よそ者』の前に立ちはだかる日本的共同体への憎しみの感情」だと分析し、歴史家の與那覇潤氏は「中間集団の世界に対する嫌悪感」と表現しています。それぞれ強調点は少しずつ違うのですが、これらの論評に共通しているのは、日本社会を実質的に動かしてきた既成の権力や、共同体的な意思決定システムに対して、菅氏が長年に渡りコンプレックスやルサンチマンを抱いており、その反発心こそが権力追求の意欲と急進的な改革への原動力になっているのだという見方です。いわゆる「既得権益」と呼ばれるものは、社会構造の安定のために必要と思われることも多いですが、実際にその不条理さに直面すると、確かにそれを打破してやりたいという衝動がこみ上げてくるものではあります。問題はその衝動が、弱者への共感に根差したものとして成熟するか、強者への妬みや恨みとして暴走するかの違いで、仮に菅総理の政治家としての本質が後者に属するとすれば、新たな既得権を打ち立てるだけに終わる可能性がある。それが、今回の特集サブタイトル「改革者か、破壊者か」に込められた意味合いです。福沢諭吉は、世に言われる悪徳はどんなものでも場面・強弱・方向によっては美徳に転ずることがあるが、「恨望」だけはどう転じても悪徳でしかなく、「衆悪の母」(諸悪の根源)なのだとまで言いました。また京都学派の哲学者三木清は、どんなネガティブな情念も天真爛漫に現れさえすればある美しさ伴うものだが、「嫉妬」だけは天真爛漫ということがあり得ないと述べています。我々のリーダーの行動原理が「恨み」や「妬み」に根ざすものであるか否かを見極めるのは、それだけ重要なことなのです。詳しくは、昨日発売された『表現者クライテリオン』最新号をお読みいただければと思います。ちなみに「表現者大学」では、人文社会科学の古典を読むオンライン読書会を今年の10月から開催しており、毎回50名以上(表現者塾の塾生も参加できるため)の方が参加されて大盛りあがりとなっています。12月26日(土)の回は、私が進行を担当してニーチェの『道徳の系譜』を扱うのですが、この本は「ルサンチマン」が正義を装ったような言説や振る舞いを扱き下ろすもので、図らずも本誌最新号のテーマと重なるところがありますね。関心がおありの方はぜひ、下記リンクからご入会ください。
2020/12/23 新型コロナウイルスの変異種の感染が拡大している英国からの入国者を各国が規制している問題で、英メディアはこれまでに50カ国以上が、英国からの旅客機の到着停止などの規制導入を決めたと報じた。規制の動きは欧州だけでなく、中東や中南米、アフリカにも広がっている。

トップページに戻る

岩田 雅プロフィール

近影

佐渡市(旧金井町)出身
1946年生まれ
(東京都世田谷区在住)
元通信社論説委員
2010年日本ペンクラブ会員

国際評論集

  • 第1弾「鬼太鼓の鬼 世界をゆく」(2010年)
  • 第2弾「鬼太鼓の鬼 アジアをゆく」
  • 第3弾「鬼太鼓の鬼 世界をゆく―女王のいる共和国」
    (2011年)
  • 第4弾「時代を歩く―評伝。
    本間雅晴のころ」
    (2012年)
  • 第5弾「時代と生きる-
    みやこの西北・早稲田の杜」
    (2013年)
フェイスブック

↑ページの先頭へ戻る