おんでこ鬼の目 鬼のにらみ

2018/10/20 約三十年にわたる、陛下の「天皇」としてのお仕事への献身も、あと半年ほどで一つの区切りの時を迎えます。これまで「全身」と「全霊」双方をもって務めに当たっていらっしゃいましたが、加齢と共に徐々に「全身」をもって、という部分が果たせなくなることをお感じになり、政府と国民にそのお気持ちをお伝えになりました。五月からは皇太子が、陛下のこれまでと変わらず、心を込めてお役を果たしていくことを確信しています。陛下は御譲位と共に、これまでなさって来た全ての公務から御身を引かれますが、以後もきっと、それまでと変わらず、国と人々のために祈り続けていらっしゃるのではないでしょうか。私も陛下のおそばで、これまで通り国と人々の上によき事を祈りつつ、これから皇太子と皇太子妃が築いてゆく新しい御代の安泰を祈り続けていきたいと思います。二十四歳の時、想像すら出来なかったこの道に招かれ、大きな不安の中で、ただ陛下の御自身のお立場に対するゆるぎない御覚悟に深く心を打たれ、おそばに上がりました。そして振り返りますとあの御成婚の日以来今日まで、どのような時にもお立場としての義務は最優先であり、私事はそれに次ぐもの、というその時に伺ったお言葉のままに、陛下はこの六十年に近い年月を過ごしていらっしゃいました。義務を一つ一つ果たしつつ、次第に国と国民への信頼と敬愛を深めていかれる御様子をお近くで感じとると共に、新憲法で定められた「象徴」(皇太子時代は将来の「象徴」)のお立場をいかに生きるかを模索し続ける御姿を見上げつつ過ごした日々を、今深い感慨と共に思い起こしています。皇太子妃、皇后という立場を生きることは、私にとり決して易しいことではありませんでした。与えられた義務を果たしつつ、その都度新たに気付かされたことを心にとどめていく――そうした日々を重ねて、六十年という歳月が流れたように思います。学生時代よく学長が「経験するだけでは足りない。経験したことに思いをめぐらすように」と云(い)われたことを、幾度となく自分に云い聞かせてまいりました。その間、昭和天皇と香淳皇后の御姿からは計り知れぬお教えを賜り、陛下には時に厳しく、しかし限りなく優しく寛容にお導き頂きました。三人の子どもたちは、誰も本当に可愛く、育児は眠さとの戦いでしたが、大きな喜びでした。これまで私の成長を助けて下さった全ての方々に深く感謝しております。陛下の御譲位後は、陛下の御健康をお見守りしつつ、御一緒に穏やかな日々を過ごしていかれればと願っています。そうした中で、これまでと同じく日本や世界の出来事に目を向け、心を寄せ続けていければと思っています。例えば、陛下や私の若い日と重なって始まる拉致被害者の問題などは、平成の時代の終焉(しゅうえん)と共に急に私どもの脳裏から離れてしまうというものではありません。これからも家族の方たちの気持ちに陰ながら寄り添っていきたいと思います。先々(さきざき)には、仙洞(せんとう)御所となる今の東宮御所に移ることになりますが、かつて三十年ほど住まったあちらの御所には、入り陽(ひ)の見える窓を持つ一室があり、若い頃、よくその窓から夕焼けを見ていました。三人の子どもたちも皆この御所で育ち、戻りましたらどんなに懐かしく当時を思い起こす事と思います。赤坂に移る前に、ひとまず高輪の旧高松宮(たかまつのみや)邸(てい)であったところに移居いたします。昨年、何年ぶりかに宮邸(みやてい)を見に参りましたが、両殿下の薨去(こうきょ)よりかなりの年月が経ちますのに、お住居(すまい)の隅々まできれいで、管理を任されていた旧奉仕者が、夫妻二人して懸命にお守りして来たことを知り、深く心を打たれました。出来るだけ手を入れず、宮邸であった当時の姿を保ったままで住みたいと、陛下とお話しし合っております。公務を離れたら何かすることを考えているかとこの頃よく尋ねられるのですが、これまでにいつか読みたいと思って求めたまま、手つかずになっていた本を、これからは一冊ずつ時間をかけ読めるのではないかと楽しみにしています。読み出すとつい夢中になるため、これまで出来るだけ遠ざけていた探偵小説も、もう安心して手許(てもと)に置けます。ジーヴスも二、三冊待機しています。また赤坂の広い庭のどこかによい土地を見つけ、マクワウリを作ってみたいと思っています。こちらの御所に移居してすぐ、陛下の御田(おた)の近くに一畳にも満たない広さの畠(はたけ)があり、そこにマクワウリが幾つかなっているのを見、大層懐かしく思いました。頂いてもよろしいか陛下に伺うと、大変に真面目なお顔で、これはいけない、神様に差し上げる物だからと仰せで、六月の大祓(おおはらい)の日に用いられることを教えて下さいました。大変な瓜田(かでん)に踏み入るところでした。それ以来、いつかあの懐かしいマクワウリを自分でも作ってみたいと思っていました。皇太子、天皇としての長いお務めを全うされ、やがて八十五歳におなりの陛下が、これまでのお疲れをいやされるためにも、これからの日々を赤坂の恵まれた自然の中でお過ごしになれることに、心の安らぎを覚えています。しばらく離れていた懐かしい御用地が、今どのようになっているか。日本タンポポはどのくらい残っているか、その増減がいつも気になっている日本蜜蜂は無事に生息し続けているか等を見廻(まわ)り、陛下が関心をお持ちの狸(たぬき)の好きなイヌビワの木なども御一緒に植えながら、残された日々を、静かに心豊かに過ごしていけるよう願っています。      1 2 news
2018/10/20 皇后さまは20日、84歳の誕生日を迎え、宮内記者会の質問に文書で回答された。天皇陛下が来年4月30日で退位した後の日々について「5月からは皇太子が、陛下のこれまでと変わらず、心を込めてお役を果たしていくことを確信している」とし「陛下のおそばで、国と人々の上によき事を祈りつつ、皇太子と皇太子妃が築いてゆく新しい御代の安泰を祈り続けていきたい」と明かした。 代替わりまで約半年となった心境を尋ねる質問に答えた。来年の誕生日からは、記者会の質問を受けず、皇后さまの思いを聞く毎年恒例のやりとりは、今回が最後となる見通しだ。 news
2018/10/20 今年も、皇后さまは20日の誕生日にあたって文書でお気持ちを表した。例年はその1年の出来事を振り返る内容だったが、皇后として最後となる今回は、皇太子妃、皇后として歩んだ自身の60年近い歴史を振り返るものとなった。 皇后さまは文書で、24歳の結婚当時の心境を「大きな不安」と表現する一方で、天皇陛下の「お立場に対するゆるぎない御覚悟に深く心を打たれた」とつづった。陛下は当時「義務は最優先であり、私事はそれに次ぐもの」と語っていたという。その言葉のままに憲法の定める「象徴」の立場を模索し続けていた、と感慨を述べている。皇后さま自身も、「経験するだけでは足りない。経験したことに思いをめぐらすように」という学生時代の学長の言葉を自分に言い聞かせながら、日々を過ごしてきたという。毎年定例の行事でも所作の確認を怠らず、宮中祭祀(さいし)や養蚕など伝統行事をいかに継承していくかを気に掛けるのも、そんな思いの表れだろう。84歳になった皇后さま。宮内庁によると、長年の頸椎(けいつい)症性神経根症に加え、今年初めころからは時折足が痛むという。現在は、微熱やせきなどの風邪の症状も続いている。「まさに満身創痍(まんしんそうい)」(側近)の状態だが、「ご譲位まで陛下がお元気に務めを果たされる。そのことだけを願い、私は精いっぱいお支えします」との決意を周囲に伝えているという。 news
2018/10/20 安倍晋三首相の25日からの訪中に合わせ、中国から日本への新たなジャイアントパンダ貸与に向けて両国政府が基本合意することが19日、分かった。来年6月を見込む習近平国家主席による就任後初の訪日の際に正式決定を表明する案が中国政府内で浮上している。日中関係筋が明らかにした。日中両政府はパンダを関係改善の象徴としたい考えだ。 関係筋によると、安倍氏の訪中の際、両国が貸与に関する文書に署名する方向で調整が進められている。中国は1972年に日中国交正常化を記念し、東京・上野動物園にカンカンとランランを贈り、日本はパンダブームに沸いた。 news
2018/10/20 岩屋毅防衛相は19日、韓国で行われた国際観艦式をめぐり、韓国側から自衛艦旗(旭日(きょくじつ)旗)の掲揚自粛を求められ、海上自衛隊の護衛艦の参加を見送ったことについて、韓国の鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防相に「残念だった」と伝えた。訪問先のシンガポールで開いた日米韓3カ国の防衛相会談で伝達した。防衛省が明らかにした。国際観艦式は11日に韓国南部・済州島(チェジュド)で行われた。海自護衛艦は当初、参加する予定だったが、防衛省によると、韓国側から参加国に対し、マストに自国と韓国の国旗を掲げるよう求める通知があった。日本側は条件の変更を求めたが、岩屋氏は今月5日に護衛艦の派遣中止を発表した。 news
2018/10/19 米紙ワシントン・ポスト電子版は17日、トルコで失跡したサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏がアラブ世界の報道の自由を訴える「最後の」コラムを掲載した。失跡が伝えられた翌日にコラムを受け取り、扱いを留保していたが、もはや帰ってこないことを「受け入れざるを得ない」と判断し掲載したという。 「アラブ世界が最も必要としているのは表現の自由」と題するコラムでカショギ氏は、大部分のアラブ諸国には報道の自由がなく「悲しいことにこうした状況は変わりそうにない」と指摘。「アラブ諸国の政府はインターネットを遮断し、地元の記者を逮捕している」と糾弾した。 news
2018/10/19 安倍晋三首相は17日午後(日本時間同日夜)、フランスのマクロン大統領と会談し、海洋進出を強める中国を念頭に海洋安全保障分野での協力強化を申し合わせた。 北朝鮮の非核化に向け国連安全保障理事会が決めた対北制裁の完全な履行と国際社会の連携が不可欠との認識を共有し、日本人拉致問題の早期解決が必要だとの立場でも一致した。 news
2018/10/19 歌手沢田研二さん(70)のコンサートが開催直前に中止された問題で、沢田さんの所属事務所は18日、本人自らが取りやめを決めたと明らかにした。集客の少なさへの不満が理由だったという。 沢田さんのオフィシャルホームページには「お客様には大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」とメッセージが記載された。 コンサートは17日夜、さいたま市のさいたまスーパーアリーナで開催予定だった。 news
2018/10/19 亡命中のタイのタクシン元首相は18日、滞在先の香港で共同通信の単独インタビューに応じた。来年実施予定の総選挙でタクシン派のタイ貢献党を柱とする反軍事政権勢力が「500議席中300を獲得すると信じている」と語り、政権奪還に強い自信を示した。タイでは軍がタクシン派を追放した2014年のクーデター以降、プラユット暫定首相率いる軍政が実権を掌握している。タクシン氏は、軍政下で「真の民主主義は期待できない」と主張。政権奪還後の首相復帰は「望んでいない」としながらも「国民が必要とし、私が国の役に立てるなら、やれることはやる」と含みを持たせた。 news
2018/10/18 米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は16日、米国で9日に英語版が出版された村上春樹さんの長編小説「騎士団長殺し」について「ずっと良い作品を残してきた作家の小説としては期待外れだった」との辛口の書評を掲載した。書評を執筆した英国出身の作家ハリ・クンズル氏は、同小説について「あまりに長すぎる、生焼けの超自然の物語」と表現。300~400ページで収まる内容なのに700ページ程度に引き伸ばされた印象があり「だぶだぶのモンスター」のように感じたという。小説に登場する主人公の妻ら女性について読者は多くを知ることができないなど指摘した。 news
2018/10/17 フランスのマクロン大統領は16日、コロン前内相の辞任を受け、自身の政党、共和国前進(REM)のクリストフ・カスタネール代表を新内相に任命し、国土相、文化相、農相の3人を交代させるなどの内閣改造を行った。 昨年5月、大統領に就任したマクロン氏は経済政策の結果不足などから支持率の低下が深刻化。内閣改造により仕切り直しを図りたい考え。 news
2018/10/17 16日付のロシア紙イズベスチヤは、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が11月6日の米中間選挙前の10月末か11月初めにロシアを訪問すると報じた。韓国の消息筋の話として伝えた。プーチン大統領との会談場所としてモスクワと極東ウラジオストクが検討されているという。ロシアのペスコフ大統領報道官は16日、インタファクス通信に対し「金正恩氏の訪問時期とプーチン大統領との会談場所は、外交ルートを通じて決められる」とだけ述べ、報道を否定も肯定もしなかった。韓国の文在寅大統領は8日、金正恩氏が近くロシアを訪問するとの見通しを示していた。 news
2018/10/17 欧州連合(EU)高官は16日、メイ英首相が15日に英議会で行った演説について、英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る合意が想定よりもさらに難しくなることを示した、と述べた。 news
2018/10/16 サウジアラビア政府を批判してきた米国在住のサウジ人著名記者がトルコで行方不明になった問題で、サウジ政府が記者を尋問中に手違いで当局者が死亡させた「事故死」との結論で幕引きを図るとの観測が米メディアで浮上している。ポンペオ米国務長官は16日、サウジの首都リヤドを訪問した。サルマン国王らと会談して事実関係を直接確認する考えだ。 関与を全面否定してきたサウジ政府は従来の説明を転換させることになるが、国際社会の批判が高まる中、拘束を指示したとも指摘されたムハンマド・ビン・サルマン皇太子などサウジ王室から非難をそらすことを狙っているとみられる。 news
2018/10/16 欧州連合(EU)のトゥスク大統領は15日、英国が条件などで合意しないままEUを離脱する可能性が高まっているとの認識を示し、加盟各国はこうした事態に備える必要があるとの考えを示した。EUは17─18日に首脳会議を開催。トゥスク大統領によると、初日の夕方に英国のメイ首相が離脱方針について他の27カ国に説明し、その後、27カ国の首脳でバルニエEU首席交渉官の助言に基づき今後の交渉の進め方を討議する。 news
2018/10/16 民間シンクタンク「ブランド総合研究所」(東京)が15日に発表した2018年の市区町村別の魅力度アンケートで、北海道函館市が2年ぶり5度目の1位となった。2位は昨年1位の京都市、3位は札幌市だった。研究所によると、調査は今年で13回目。千の市区町村と47都道府県を対象に6~7月、インターネットで84項目について尋ね、20~70代の男女約3万人から有効回答を得た。9月に起きた北海道の地震の影響は反映されていない。函館市は16年まで3年連続首位で、昨年の2位から返り咲いた。調査では7割以上の人が「魅力的」と回答した。 news
2018/10/15  任期満了に伴う新潟市長選が14日、告示され、元官僚で前同市北区長の飯野晋氏(45)、野党5党が支援する前市議の小柳聡氏(31)、自民党前市議の吉田孝志氏(56)、自民党が支持する前参院議員の中原八一氏(59)の無所属新人4氏が立候補を届け出た。28日の投開票に向け、14日間の選挙戦に突入した。 4期16年務めた篠田昭市長(70)が退任し、政令市の新たなリーダーを決める選挙で、篠田市政の「継承か刷新か」が焦点となる。人口減少対策や中心市街地の活性化、公共交通の在り方、市財政の立て直しなどを巡り、論戦が繰り広げられる。自民党は中原氏の支持を決めたが、一部の市議らが吉田氏を支援し、事実上の分裂選挙となる。野党は立憲民主、国民民主の両党県連と、共産、社民、自由各党が小柳氏を支持する。飯野氏は篠田市長の後援会の一部などが支援する。 飯野氏は新潟市西区のきらら西公園で第一声を上げた後、市内各区を回った。中央区の街頭演説では篠田市長があいさつに立った。 news
2018/10/15 ドイツメディアは14日、南部バイエルン州議会選挙の出口調査結果を報じ、与党キリスト教社会同盟(CSU)の支持率は35.5%と過去最低水準になり、同党の大敗が濃厚となった。 news
2018/10/15 韓国の文在寅大統領は14日までに、フランス訪問に合わせて同国のフィガロ紙の書面インタビューに応じ、北朝鮮経済は制裁によって大きな困難に直面しており、制裁の強化には「耐える能力がない」と説明、報復を受け経済環境の悪化を招くことが明らかな非核化合意の破棄は、現実には選択し得ないとの認識を示した。韓国大統領府がインタビュー内容を明らかにした。文氏は、北朝鮮が過去に非核化合意を守ってこなかったとの同紙の指摘に対し、金正恩朝鮮労働党委員長が完全な非核化を国際社会に約束し「北朝鮮の体制内でも既に公式な見解となっている」と強調した。      news
2018/10/14 国体をカギにすれば、戦前の破滅はもちろん、戦後の日本の閉塞(へいそく)も解明できる。この大胆な仮説で、平成日本の病巣をえぐり出す、いま注目の一冊だ。 戦前の国体とは何か。《天皇を中心とする政治秩序》にすぎないはずが、天皇の国民↓天皇なき国民↓国民の天皇、の三段階を経て、《神権政治的…な「専制君主制国家」》に膨らんだ。天皇は国民を愛しているから、国民は天皇に尽くせ。この「国民の天皇」観が二・二六事件の前提だ。「君側の奸(かん)」を除けば天皇と国民の絆が回復するという幻想だ。それに悪乗りし軍部が戦争に突き進んだ。戦後の国体とは何か。天皇は主権を失い、マッカーサーが君臨した。アメリカが《天皇を通じて主権を行使する》のが「天皇制民主主義」の内実だった。《国体は変更されたと同時に護持された》。こうした奇妙な戦後への苛立(いらだ)ちを、著者は、丸山眞男や吉本隆明や三島由紀夫の言動のなかに探っていく。日米関係が特別なのは、国体の柱だからだ。アメリカは日本を愛しているから、日本人はアメリカに尽くせ。幻想だが、戦後を呪縛している。日米安保条約は冷戦下まだしも合理的で、経済的繁栄を支えた。冷戦後には「再定義」され、アメリカの世界戦略を日本が支えるものになった。《対米従属は、それを必然化してきた経済的下部構造が失われた時にこそ、逆説的にも強化されてきた》。白井聡氏は《日本は独立国ではなく、そうありたいという意思すら持っておらず、かつそのような現状を否認している》と言い切る。かつて国体と心中した軍部のように、日本は再び破滅への道をたどっているとする。占領(アメリカの日本)から束(つか)の間の経済的繁栄(アメリカなき日本)をへていま、「日本のアメリカ」という幻想が強まっている。安倍政権では、《合理的な親米保守が「愚かしい右翼」》と合流するに至った。その病理は、己れが何かを知らない空虚さである。《戦後対日支配の要点》は、《欧米人に対するコンプレックスとアジア諸民族に対するレイシズムを利用》することだった。すると《日本人はアメリカに従属する一方、アジアで孤立し続けるだろう》。その日本人がいま、経済的繁栄もアジアに対する優位も崩れ、《集団的発狂》に陥っているところだ、と著者は診断する。フェイク・ニュースが拡散し、親中反日のレッテルを貼り、ヘイトスピーチが横行する。焦燥感が《大衆のあいだでの排外主義的心情のひろがりのかたちをとって現れている》。こうした《泥沼のような無気力》をどう脱出すればよいのか。白井氏は二○一六年八月の天皇の「お言葉」に、衝撃を受けたという。天皇は全国をくまなく訪れ、被災者に寄り添い祈ることで、《日本という共同体の霊的中心》のつとめを果たしてきた。その思いが政府や有識者に届かない深い危機感が、お言葉に滲(にじ)んでいる。戦後の国体の亀裂が露(あら)わになった。戦前~戦後を通じて、日本の近代を一望に収める本書の診断は、圧倒的な説得力がある。文体も冷静で誠実だ。この問題提起の先をどう考えるべきか。 アメリカの覇権は、永続するわけではない。ゆっくり弱体化していく。世界は、列国のせめぎあいの場となろう。明治の日本が直面した、列強の競う国際社会と似ている。アメリカへの幻想を捨て、日本人はリアルな認識を深めよう。とりわけ、幕末維新からの日本の近現代史を深く理解し直そう。読者は、若い世代に属する白井氏がこの同時代を共に歩み、かくも手堅く考えていることを、頼もしく思ってよいのである。 news

岩田 雅プロフィール

近影

佐渡市(旧金井町)出身
1946年生まれ
(東京都世田谷区在住)
元通信社論説委員
2010年日本ペンクラブ会員

国際評論集

  • 第1弾「鬼太鼓の鬼 世界をゆく」(2010年)
  • 第2弾「鬼太鼓の鬼 アジアをゆく」
  • 第3弾「鬼太鼓の鬼 世界をゆく―女王のいる共和国」
    (2011年)
  • 第4弾「時代を歩く―評伝。
    本間雅晴のころ」
    (2012年)
  • 第5弾「時代と生きる-
    みやこの西北・早稲田の杜」
    (2013年)
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